5.奥社~天手力雄命編)2020年6月エリックジャパンツアー 戸隠五社巡りの行程
2020年エリックジャパンツアー戸隠の行程
中社から古道を歩いて奥社参道近くまでやってきました。
ここからは戸隠森林植物園の遊歩道を経由して、奥社まで向かいます
71ヘクタールの広大な敷地に広がる大自然
季節ごとの美しさに出会えます。
緑の木々が水面に映る様がとても見事な「みどりが池」
静かな園内に聴こえてくるのは野鳥の大合唱ばかり
響き渡る鳥たちの歌声を聴きながら、水芭蕉やカラマツの林の道を歩いていると、異世界に入ったような感覚になります
園内には2か所トイレがありますので、奥社参拝の前に立ち寄りましょう♪
そして、いよいよ旅のクライマックス
奥社の大鳥居へ
大鳥居から広い参道がまっすぐに伸びているのが見渡せます。
戸隠神社は本来、奥社が本社であって、中社や宝光社は門前と呼んでいました。
その奥社も参道入り口から天手力雄命を祀る奥社と九頭竜社を含めた全体をそう呼ぶこともあれば、二つの社だけを奥社と言うこともあります。
鳥居をくぐってすぐにあるのが一龕龍王(いっかんりゅうおう)の祠です。
干ばつの際種池の水を汲んで雨乞いをすると、その里には必ず雨が降るという信仰があり、その池の主を「一龕龍王」を戸隠神社のここでお祀りしてます。
参道の中央は神様の通り道ですので、私たちは左右いずれかの端を歩いて進みます
1kmほど歩くと「随身門」が見えてきます。
戸隠神社が顕光寺と呼ばれていた神仏混淆時代、ここは「仁王門」であり、仁王像が祀られていました。
明治の神仏分離の際に、随身像に入れ替えられました。
そして、元の仁王像は善行寺隣にある寛慶寺に移されています。
こうした移行もごく自然に行われたそうです。
さて、大鳥居からここまでが「人間界」、
そして、随身さまの守護する門から先は神界です。
神界を歩む旅は「内なる神」に出会う旅です。
伝承ではこのように語り伝えられています。
「弟神 須佐之男命の乱暴な振る舞いに心を痛めた天照大御神は岩戸にお籠りになってしまいます。
天照大御神に岩戸から出て来て頂くよう、八意思兼命(やごころおもいかねのみこと)が知恵を出します。
まず長鳴鳥の声には太陽の神様を呼ぶ力があるということで、最初に長鳴鳥を鳴かせます
しかし、岩戸は開かず、失敗に終わりました。
次に、神々は天鈿女命の踊りに興じて笑い転げます
神々の楽しそうな様子を訝しんだ天照大御神は、少しだけ岩戸をお開けになります
天鈿女命は
『あなた様よりも貴い神がおいでになって、皆、喜んでいるのです。
ここにお連れ致します』
と言いました。
そして、天児屋命(あめのこやめのみこと)と布刀玉命(ふとだまのみこと)が、鏡を差し出して天照大御神のお顔を写しました。」
この伝承を私たちの心に置き換えてみるとどうでしょうか?
辛くて心を閉じてしまった時、周りがどんなに
「そんなんじゃ、だめだよ」
「早く立ち直って」
「がんばろうよ」
と声をかけても心を開くことはできません
長鳴鳥が大きな声で鳴き続けても、天照大御神が岩戸を開けなかったことは、それを象徴しているように思えます
次に天鈿女命が楽しそうに踊ります
「2 宝光社・火之御子社編」でもご紹介しましたように天鈿女命は「開放のエネルギー」です。
「遊び」=「ゆとり」=「全ては許されているという寛容さ」が閉ざした心をほんの少しでも開放する呼び水となるということではないでしょうか?
そして、心の扉をほんの少し開いてみると、そこに鏡が差し出されます。
「貴い神がいらっしゃいます」
といわれて鏡を覗き込んでみるとそこに写っているのは「自分自身」の姿でした
こうして私たちは自分自身の内側に神が坐すことを知るのだと思います。
天照大御神は鏡に写るご自分の姿をご覧になるまでに岩戸の中で沈黙されていました。
私たちもまた、内なる神に出会うためには沈黙が必要です
ですので、随身門から奥社へ至る神界の道のりは沈黙して歩きます。
さて、随身門を過ぎると樹齢四百年以上の杉並木が続きます。
ここからガラッと空気が変わり、荘厳な領域に入っていきます
参道の左側には石垣が続きます。
これは平安末期から明治まで続いた本院(奥社)の院坊屋敷(僧の住まい)の跡だそうです。
平坦な参道は、途中から長い石段に変わります。
この石段を昇り切るといよいよ奥社に辿り着きます。
右側が戸隠神社本社、左側が九頭竜社です。
戸隠神社本社の天手力雄命(あめのたぢからおのみこと)は地
九頭竜社の九頭竜大神は天を司っているそうです。
最初に戸隠神社本社を参拝します。
戸隠神社本社
祭神 天手力雄命(あめのたぢからおのみこと)
さて、
「あなた様よりも貴い神がおいでになって、皆、喜んでいるのです」
と言われ、鏡を見せられた天照大御神
自分の顔だとわからなかったため、もう少しよく見てみようと身を乗り出します。
すると脇に隠れて立っていた天手力雄命(あめのたぢからおのみこと)が、その御手を取って引き出し、岩戸を持ち上げて遠くへ放り投げました。
「これから内側に戻ることは叶いません」
と言いました。
こうして天照大御神が岩戸を出たことにより、高天原も芦原中国(あしはらのなかつくに)も明るさを取り戻しました。
伝承では天岩戸の場所は
宮崎県の高千穂といわれています。
天手力雄命は、高千穂から長野県まで岩戸を飛ばし、着地した岩戸が戸隠山になったといわれます。
「戸隠」という名前の由来もそこからきています。
奥社の戸隠神社本社には、この天手力雄命が祀られています。
本地垂迹説では、天手力雄命=聖観音とされています。
怪力の神様と観音様。
不思議な照応ですね。
ですが、天手力雄命は「手の温もりの力」と考えるとしっくりくる気がします。
山1つ分もの岩戸を持ち上げて、宮崎県から長野県まで飛ばす怪力をもつ天手力雄命
そんな力があるのならば、そもそも天照大御神がお籠りになった時、強引に岩戸をこじ開けることができたはずです。
けれど、神々はそうした強引なことはしませんでした。
閉ざされた天照大御神の心を、天鈿女命の遊び、ゆとり、寛容さがほんの少し開くきっかけを作りました。
次に天手力雄命が天照大御神の御手に触れ、岩戸から引き出します。
これが人の手の温もりの力です。
本当に辛い時、何よりの助けになるのは、背中を撫でてくれたり、肩を抱いてくれたりする手の温もりなのだと思います。
さて、天手力雄命にご挨拶した後は、左手にある九頭竜社を参拝します
つづく
「2020年6月 エリックジャパンツアー
戸隠五社巡りの行程(1~6)」はこちらからどうぞ
シルフェ 阿部小百合